ブログ京都本店
新唐墨
新唐墨の仕込みの季節です。
今回はこの新唐墨についてお話をさせていただきます。
唐墨とは
唐墨はボラなどの卵巣を塩漬けし、塩抜き後天日干しで乾燥させたものです。
名前の由来は形状が中国、唐の時代伝来の書道の墨「唐墨」に似ていた為です。
唐墨の原材料はボラの卵巣で11月から12月初旬のわずかな期間しか流通しません。
日本料理ではこの時期にからすみを仕込むことが年に一度の習慣であり
また今年も上質な唐墨を作りたいとワクワクします。
唐墨はウニ、このわたと並んで日本三大珍味のひとつです。
古くから塩辛くねっとりとしたチーズのような味わいは日本料理でも高価な酒肴として珍重されてきました。
産地は特に長崎県が有名で文豪永井荷風は「からすみは長崎でつくるものを最上となす。」と荷風日記に記しています。
からすみは日本以外の世界各地でも作られています。
台湾やイタリアのサルデーニャ島、スペイン、エジプトでも作られていますが、
原材料はボラ以外の海産魚の魚卵が用いられています。
台湾ではアブラソコムツが用いられ、日本に比べて安価で取引されています。
新唐墨の作り方
1.材料選び
最も重要な作業です。
原材料のボラの卵巣は鮮度の良いもの、そして大ぶりで色の良いものを選びます。ここでの材料選びが最後の出来上がりを大きく左右します。
鮮度の悪いもの、色の悪いものは出来上がりが黒ずんだり美しく仕上がりません。
2.下処理
生のボラの卵巣は表面の膜が薄く、中の卵が出てしまう可能性があるので
丁寧にかつ慎重に扱います。
まず全体を水でやさしく洗って表面の汚れを取り除きます。
次に血管の血抜きをしますが、家庭の裁縫で使う細い針が必要です。
ぬるま湯を用意してその中にからすみをつけます。針で慎重に血管の部分を刺し、丁寧に血を外に取り出します。
3.塩漬け
丁寧に血抜きした後、表面の水気を拭き取ります。
次に塩漬けの工程ですが、完全に塩の中にボラの卵巣を埋め込んでしまう
イメージで行います。
唐墨の大きさにもよりますが、約3~4日間塩漬けしておきます。
4.塩抜き
塩漬けの後、表面の塩を洗い流して次は塩抜きをします。
安価な料理酒を用意してその中にボラの卵巣をつけておきます。
約3~4日間そのままにします。
5.天日干し
塩抜きの後、表面の水分をしっかり拭き取り、天気のいい日に天日干しに
します。
定期的に裏表をひっくり返しながら表面に浮き出てくる脂分をこまめに
拭き取ります。
大きさにもよりますが約2週間前後で美しく鼈甲色に輝く新唐墨が出来上がります。
家の外で干す際は猫や鳥のエサになってしまう被害や、急な雨でずぶ濡れになってしまったり、諸々注意が必要です。
唐墨の料理
1. 唐墨大根
日本料理の定番。
懐石料理の八寸や高級な酒肴として冬の季節不動の人気アイテムです。
薄く切った唐墨に、同じくらいに切った大根を挟んで盛り付け、食べる時は一般的に唐墨と大根を一緒に食べます。その相性は抜群です。
京都ではこの時期、大根の代わりに旬の聖護院かぶらを使ったりします。
京都らしさ、季節感がでてお客様にとても人気があります。
2. 新唐墨のおろし和え
からすみの表面の薄皮を取り除き、適宜サイコロ状に切り分けておきます。
旬のかぶら又は大根をすりおろしたものを用意します。
両者に土佐酢を加えてざっくりと混ぜ合わせて、こんもりと器に盛り付けます。
細く切った柚子を天にあしらったら出来上がりです。
この時期らしいとても素敵でさっぱりとした一品です。
瓢斗京都駅前本店は2018年10月20日にオープン致しました。
名物の出汁しゃぶをはじめ、京懐石、アラカルトメニューなど多数取り揃えております。
お客様のご来店を従業員一同心よりお待ち申し上げております。
瓢斗京都駅前本店
料理長 山本耕作