ブログ京都四条烏丸店
京懐石について
冬の寒さもいっそう本格的になって参りましたが、皆様年末の多忙な日々をお過ごしのことと思います。
今回は“京懐石”についてお話をさせて頂きます。
そもそも“京懐石”とはどんな料理なのでしょうか?
「興味はあるが、分かりにくい」「作法が難しそう」といったイメージをもつ方もいらっしゃると思います。
今まで“京懐石”を召し上がったことがない方もいるでしょう。
ですが、日本人なら誰もが「一度は食べてみたい」「もっと知りたい」との想いがあるのではないで
しょうか。
<懐石とは>
まず、“懐石”の基本は一汁三菜。千利休が大成した茶道の中の茶事にも深く関係しています。
“懐石”の言葉の由来は、昔修行僧が空腹を凌ぐために温めた「石」を「懐」に抱いたことにあると言われています。
そして、京都においては、寺などで発達した“精進料理”や伝統的家庭料理“おばんざい”などの影響を受けて現在、“京懐石”として確立されています。
更に深くそのルーツを探ると、鎌倉時代から室町時代の武家社会において完成した“本膳料理“に至ります。
“本膳料理”の基本構成は一の膳から三の膳まであり、一汁三菜、二汁五菜、二汁七菜と、実際に食べきれる量ではなく、見た目の豪華さを競うものでした。
懐石料理の一汁三菜とは、最初に出される向付、飯、汁がのったお膳と煮物椀、焼き物までを指します。
千利休の桃山時代に開花した茶席料理である“懐石料理”に対して、江戸時代に始まった宴席の酒肴料理である“会席料理”は区別されています。“懐石料理”が本来茶の湯において、お茶を飲むための料理であるのに対して、“会席料理”は宴席で酒を飲むための料理という要素が強いのです。
そして、懐石料理の中で最も重要なのが“季節感”。千利休の利休7則にも“夏は涼しく冬は暖かに”とあり、この”季節感”こそが懐石料理における最も重要な精神です。
<京懐石について>
そして、“京懐石”が京都で発展した理由は大きく2つあると言われています。
まず、京都は豊富で良質な地下水に恵まれ、これにより豆腐や湯葉、生麩など懐石料理では欠かすことのできない食材の一大生産地となりました。そして、京都盆地の地下には琵琶湖に匹敵する規模の膨大な規模の地下水が眠っていると言われています。また、伝統的京野菜も近年需要が増え、生産が盛んに行われています。
これらは京都で懐石料理が発展する絶好の環境であることの大変重要な要因といえます。
つまり1つ目の理由は、京都が豊富な食材(豆腐、湯葉、生麩や伝統的京野菜)の生産地であったこと。
そして理由の2つ目は、古くから精進料理や伝統的な家庭料理の”おばんざい”など固有の食文化の風土が確立されていたことです。
2013年、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。
現在、和洋中問わず様々なジャンルの料理があふれていますが、懐石料理が「和食」という分野に与えた影響は大きく、計り知れません。
そこには現代社会において希薄になりつつある “日本の精神性” が秘められています。京懐石はその中でも特別なものであると言えると思います。
京都には脈々と受け継がれてきた日本文化の源流があります。そこでは古いものと新しいものが渾然一体となり良質な伝統が作られてきました。
そこには私たち日本人が大切にしている “おもてなし” の原点があるのではないでしょうか。
当店は京都創業という利点を生かして、京都らしい“おもてなし”を心掛けております。
京懐石を実際に食べたり、触れることで、“日本人でよかった”“京都って素晴らしい”など日本の食文化を再認識できるかもしれません。
お客様のご来店を従業員一同、心よりお待ちしております。
瓢斗京都店 料理長 山本耕作