ブログ京都四条烏丸店
京都の鮎文化
夏は鮎が美味しい季節です。
京の都は海から遠く、新鮮な海産物が手に入りにくい環境にありました。
そこで京都では昔から川魚料理が発達してきました。
すっぽん(京都では“丸”と呼ぶ)鰻、どじょう、鯉、モロコ、川海老、ゴリなど種類も豊富です。
先人たちの知恵と工夫により料理法も様々で、独自の川魚料理の文化が育まれてきました。
特に “鮎” は夏を代表する特別な魚です。
今回はこの京都の鮎文化についてお話しさせていただきます。
鮎の季節
鮎の季節はいつなのでしょうか?
鮎を食べられる季節は意外に長く、4月の稚鮎に始まり、5月6月は若鮎、
7月8月に盛りを迎え、9月頃には子持ち鮎、10月には落ち鮎 と季節にごとに姿を変えて
約7ヶ月にも及びます。
6月を迎えると全国の河川で一斉に鮎が解禁されます。
鮎の友釣りはあまりにも有名で、縄張りを守る鮎の習性を利用した釣り方です。
鮎は『香魚』とも呼ばれ、水のきれいな清流の川底の岩についた苔を主食とするため
獲れたばかりの生きた鮎の匂いを嗅ぐとスイカのような独特ないい匂いがします。
天然の鮎は黄金色に輝き、本当に美しい姿をしています。
北大路魯山人と保津川鮎
近代の美食家、北大路魯山人は自らの著書の中で、
京都北部の保津川の鮎は日本一であると言っています。
『姿もよく、身もしまり、香りも良い。今のところここ以上のものを食ったことがない。
鮎はつかまえてから10時間以上でなくては価値がない。
食べ方は炭で塩焼きにするのが一番美味しく、
火傷をするくらいの熱い奴を“がぶっ”と食べるのが一番である。』 と続きます。
現在ほど輸送手段が発達していなかった時代、北大路魯山人はこの保津川の鮎を
生きたまま京都から東京まで運ばせたそうです。
北大路魯山人が愛した “保津川の鮎” 。
近年は保津川の水質悪化や川ゴミの影響で質が低下しているとも言われています。
これはとても悲しいことです。
かつて“日本一美味しい鮎”といわれた保津川の鮎、そして美しい清流保津川の姿を
取り戻していきたいものです。
鮎茶屋 平野屋
京都嵐山の奥座敷、鳥居本に鮎茶屋、平野屋はあります。
創業から400年もの歴史があり、古くから多くの著名人に親しまれてきました。
愛宕山の麓に位置し、苔の生えた茅葺屋根が特徴です。
その佇まいはまるで昔の旅茶屋にタイムスリップしたような雰囲気です。
鮎料理が有名で、かの白州正子も“平野屋の鮎の塩焼き”が大好きで、
度々この地を訪れたと言います。
白洲正子は時にはこの鮎の塩焼きを4本も注文したそうで、頭から尾まで全て完食したようです。
代表的な鮎料理
塩焼き
鮎はシンプルに塩焼きにするのが一番美味しいと言われます。
生きたものを捕まえて塩を振り、塩で香ばしくじっくり焼き上げます。
表面はパリッと中はふわっと焼くのが理想的ですが、なかなか難しいものです。
やはり丸ごとがぶっと頭から尾まで全部食べるのが美味しいですね。
鮎の背越し
背越しとは鮎のお造りのことで、生きた鮎を捕まえてそのまま包丁で骨ごと薄くぶつ切りにして、
酢味噌をつけて食べてもらいます。
これは特に鮮度が命で、鮮度が悪いものはこの料理には向きません。
この料理を食べると鮎の香りと清々しい清涼感を感じます。
鮎御飯
鮎御飯はこの時期にしか味わえない一品やと思います。
薄味に味付けした炊きたての御飯の上に、塩焼きした鮎を乗せて少し蒸らします。
最後に鮎たてを細かく刻んだものを上からふりかければ完成です。
鮎の香ばしい香りと、ピリッとした鮎たてのキレのある香りが
御飯とマッチしてとても美味しいです。
瓢斗京都店では主に懐石料理において鮎料理をお出ししております。
定番の鮎の塩焼きや鮎御飯をはじめ、
お客様のご要望に応じてその他のお料理も対応させていただきます。
従業員一同お客様のご来店を心よりお待ちしております。
瓢斗 京都店 料理長 山本耕作